『Fate/Grand Order』と『チチカカコヘ』のコラボフェアを夢想する
『Fate/Grand Order』というアプリゲームがあります。どんな内容か手っ取り早く言うと山田風太郎『魔界転生』みたいなものです。
さて紀伊国屋書店新宿本店でこのゲームにあわせた本を集めたフェアを行っているのですが、なんとフェア合わせで復刊された岩村忍『暗殺者教団』が文庫ランキング1位になったそうです。すげえ。
【2階Fateフェア】フェア開催記念の限定発売文庫、岩村忍『暗殺者教国』(筑摩書房)。なんと1/23-1/29の文庫週間ベストセラー新宿本店1位となりました! ファンの皆様のために尽力してくださった筑摩書房さんには感謝してもしきれません。みなさま、ぜひこの機会にどうぞ。Y.O. pic.twitter.com/BXrsYPonhj
— 紀伊國屋書店新宿本店 (@KinoShinjuku) 2017年1月30日
私も足を運びましたが、普段はなかなか手に取られないちくま文庫、ちくま学芸文庫を何冊も手に取る若者を見て出版業界の未来に希望を持ちました。
で、ここからが本題。
『Fate/Grand Order』と『チチカカコヘ』でコラボフェアをすべきではないか。すれば売れるんじゃないか。
なお『チチカカコヘ』については以下のリンクを参照してください。
なんで電子書籍のサイトにリンクを張っているのかと突っ込んではいけない。
というわけで、ここからは私ならこういうフェアをやるという企画、ないし妄想です。
1.各社1,2点復刊させる。
例えば講談社学術文庫から出ているトマス・ブルフィンチ『シャルルマーニュ伝説』。
シャルルマーニュ伝説 中世の騎士ロマンス (講談社学術文庫)
- 作者: トマスブルフィンチ,市場泰男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/02/09
- メディア: 文庫
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アストルフォと関係があるこの本を復刊するというのはどうでしょうか。各社の文庫を網羅しているわけではありませんが、探せば『Fate』に絡んだ本があるはずです。そういう本を復刊しましょう。
ただ復刊するだけではつまらない。ここは日本国の文化、バカでかい帯を巻いて出荷する。
というわけで、2つ目のアイデアはこれである。
2.英霊の元ネタとなった本には描き下ろしの大きい帯をつける。
例えばケルトの神話ならクーフーリン、『五輪書』には宮本武蔵の描き下ろしの帯をつける。できればドラマ化や映画化した文庫みたいにカバーなのか帯なのか分からないようなサイズのものが望ましい。そうすることで前から持っている人も買いたくなるように仕向ける。
3.フェア書籍は文庫、新書のみにする
『チチカカコヘ』は文庫のフェアなので文庫以外入りようがないのですが、例外として新書を入れるのもありかもしれないので、そこは柔軟に対応する。ただあまりに高価な書籍は手に取ってもらえない可能性があるので入れない。
4.セットは3種類ほど用意する
Aセット 10冊×6社=60冊
Bセット 5冊×6社=30冊
Cセット 2冊×6社=12冊
このようにすれば小さい書店でも安心して注文できる。Bセットでもマンガなどと組み合わせれば棚一本分にはなるんじゃなかろうか。
なおCセットには『Fate』における基本的なサーヴァント、人気のあるサーヴァントに関する本のみにする。前者はともかく後者については運営に聞くか、紀伊國屋書店のフェア担当に聞くのがいいと思います。
私は『Fate/stay night』(PCゲーム版)、『Fate/Zero』に挫折した人なので参考になりません。
という感じでどうでしょうか。
それにしても紀伊國屋書店新宿本店の『FGO』フェアですが、前回といい今回といい作品に対する愛の深さ、書籍のラインナップに圧倒されます。この担当者の方は本当にこの作品が好きなのだと思うのです。やっぱりこれくらいの愛の深さがなければこういうフェアを大々的にはできないんだろうなぁ、と思ってしまうくらいに。
ただその一方で、これができるのは紀伊國屋書店新宿本店というブランドの力だとも思うのです。ここまでやりたくてもできない書店もあるのではないかと思います。そもそも地方の方は書店のフェアのためだけに上京も出来ないでしょうし。
そういう方のためにもこのようなフェアをやるのもいいのではないかと思います。せっかく若い人がちくま文庫とか、ちくま学芸文庫を買っているというのにもったいない。興味を持ってもらうためにもコラボって悪くないと思いますし、アニメ帯のついたちくま学芸文庫とか見たくないですか。私は見たい。
というわけで、『チチカカコヘ』の皆様には一度検討していただけないかと思います。
1/22ひとつき十冊に出演しました
1/22に神奈川公会堂・和室で行われたドジブックスさん主催のひとつき十冊というイベントに出演しました。
ゲストの古書現世向井さんの話が面白く、私はほとんど話しませんでした。そんな全員のリストはこちら。
以下、私の選んだ10冊とその感想。
1.斎藤美奈子『戦火のレシピ』(2002/岩波アクティブ新書)
『この世界の片隅に』関係で読んだ本。戦争中の食生活がどんどん悲惨になっていくので、やっぱり戦争はアカンとなるのでした。「疎開生活で絵の上手な子に甘いものの絵を描いてもらった」というエピソードはすずさんとりんさんのエピソードにもつながるものがあります。
なお岩波アクティブ新書はレーベルごと無くなってしまいましたが、この本は岩波現代文庫で復刊されたので、そちらでもどうぞ。
2.加藤典洋『戦後入門』(2015/ちくま新書)
左派による改憲論。国民による憲法の選び直しによって、憲法を自分たちのものにするという著者の提案には納得するのですが、鳥越俊太郎の応援演説で「国民がふらふらしてるから安倍なんかに2/3の議席を与えちゃうんですよ」と言って、それが聴衆に受けているのでは著者の提案は一顧だにされないんだろうなぁと思うのです。
3.菅野完『日本会議の研究』(2016/扶桑社新書)
日本会議寄りの人の発言って「政治家と天皇は頭がカラッポの方がいい」という風にしか思ってなさそうで不快だし、この人たちのどこに天皇に対する敬意があるのかちっとも分からんのです。
4.小林信彦・荒木経惟『私説東京繫盛記』
小林信彦が荒木経惟とともに東京を歩くのですが、著者の罵倒が面白かったのです。
全共闘以後の、頭がカラッポで、ファッション感覚だけは人なみという<ヤング>にふさわしい、いかにも田舎者が考えそうな垢抜けないコピーとCMが、そうした<錯覚>を作り出したのだが、しかし、実体がゼロでは、<文化戦略>はおぼつかない。
これは西武による渋谷開発を評した文章で、この後も西武劇場をくさし、<文化の香り>をちらつかせていると書くのだからたまらない。
あとは荒木経惟の写真が素晴らしい。1983年の新宿のクラブ「ムーランドール」の看板には研ナオコや天地真理の名前があって、時代を感じさせます。
5.星野源『働く男』(2015/文春文庫)
6.星野源『蘇える変態』(2014/マガジンハウス)
2016年は星野源の年だったと思うので上げました。
7.伊藤計劃『伊藤計劃記録Ⅰ、Ⅱ』(2015/ハヤカワ文庫)
別の本を上げるつもりでしたが、年明けにこんな記事を読んでしまったので。
この記事と伊藤計劃になんの関係があるかというと、伊藤計劃が「こちとら自腹や」(だっけ)を批判した文章があったからです。
あと伊藤計劃を誤解していたところがあって、この人は今も生きていればSFを書いて映画秘宝の常連になってるんだろうなぁと思っていたのです。ただ読んでいると映画秘宝の恣意的なボンクラ分類にも批判的だったので、やっぱりイメージで語ってはいけないと思ったのでした。
余談ですが、最近は心が狭いので「この映画は皆殺し案件ですよ」と嬉々として柳下氏にリプライを飛ばす人を見ると「他人に頼らず自分の言葉で語らんかい、死ね、バカ」としかならない。
8.梅崎春生『桜島/日の果て/幻化』(1989/講談社文芸文庫)
戦争を描いた小説でありながら、戦争という感じがしないのは戦場の苛烈な描写がないからではと思うのです。個人的には遺作となった「幻化」が素晴らしかったです。現在と回想が入り混じり、オチもなく物語は終わるのですが、久しぶりに小説を読んだという気になりました。
9.中島佑『ODD FUTURE』(週刊モーニング2016年2月4日号収録)
発表時にネットでも話題になったマンガで、私はあるコマというかせりふがすごい好きで思わず泣いてしまうのですが、それがどこかは書きません。
10.桜野みねね『まもって守護月天! 解封の章』(1)(2016/マッグガーデン)
高校時代読んでいたマンガの続編。続編があることすら知りませんでした。作中の時間も3年経っていて翔子がえらくいい女になっていてい驚いたのでした。キリュウと花織は次の単行本で出るんかねぇ。
1/22ひとつき十冊に出ます
1/22に開催されるひとつき十冊に出演します。18時30分から神奈川公会堂和室にて。今回のゲストはわめぞ代表で古書現世店主の向井透史さんです。
私が出ることになったのはたぶん客席にいてもうるさいからでしょう。とはいえ、私は付け合わせのサラダみたいなもんなので、面白い本の話は他の出演者の方がやってくれると思います。
というわけで、よろしくお願いします。
読書メーターまとめ(2016年12月)
12月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1539
ナイス数:7
さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)の感想
「みどりの星へ」「ぶっそうなやつら」「雷獣ヴァヴェリ」と表題作が好みでした。特に「雷獣ヴァヴェリ」は物語の余韻が素晴らしく、アイデアだけの作家ではないことを感じさせました。あと表題作を読んでから表紙を見るとニヤリとさせられます。赤、黒、白しかない(赤というよりピンクですが)。
読了日:12月31日 著者:フレドリック ブラウン
ゴルフ 酒 旅 (中公文庫)の感想
ゴルフ、酒、旅にまつわるエッセイ集。ゴルフについて書いたところがいちばん面白かった。しかし昔の文士というのはよく集まってゴルフとか囲碁とかやっていたのだなぁ。旅行記では列車で同席したテキサシヤンの「日本人はけものみたいな奴だと散々いわれて来た。我々は戦争をしていた。息子を一人太平洋で死なせた。ところがいまはその日本人に金を出して、アメリカへ呼ぶ人間がいる。わからない」という言葉が印象に残った。
読了日:12月24日 著者:大岡 昇平
ボロ家の春秋 (講談社文芸文庫)の感想
「蜆」「黄色い日日」「Sの背中」「ボロ家の春秋」が面白かった。「大ざっぱに言えば、人間と人間とを結び合うものは、愛などというしゃらくさいものでなく、もっぱらこのオセッカイとか出しゃばりの精神ではないでしょうか」という一文が印象に残る。あと解説にあった「どんな苛烈な環境にも日常性はある」という文章がある書評を読んでみたい。
読了日:12月18日 著者:梅崎 春生
桜島・日の果て・幻化 (講談社文芸文庫)の感想
デビュー作『風宴』、戦争を描いた(?)『桜島』『日の果て』、そして遺作となった『幻化』を収めた作品集。過去と現在を行き来しながらオチもなく終わる『幻化』が特に面白かった。
読了日:12月11日 著者:梅崎 春生
ネットには神様がいるの感想
山田太郎前参議院議員が参院選でどのように選挙戦を戦ったかが分かり面白かった。同調圧力をポジティブに捉えていたのは意外でした。あとネットの神様に認められるための掟はネット選挙だけでなく、ニュースサイトなどにも当てはまるのではないかと思いました。
読了日:12月04日 著者:山田太郎
読書メーター
2016年のまとめ(本以外編)
本については1/22以降に書きます。
映画はイベント上映を含めて14本観ました。太字はアニメ。
- 『ガラスの花と壊す世界』
- 『ちはやふる 上の句』
- 『劇場版 響け!ユーフォニアム』
- 『ズートピア』
- 『ちはやふる 下の句』
- 『FAKE』
- 『シン・ゴジラ』
- 『君の名は。』
- 『映画聲の形』
- 『怒り』
- 『RWBY Volume.2』
- 『RWBY Volume.3』
- 『この世界の片隅に』
- 『ポッピンQ』
『何物』、『SCOOP!』は観たかったのですが、タイミングが合いませんでした。
この中から5作上げると『この世界の片隅に』『ポッピンQ』『ちはやふる 上の句』『シン・ゴジラ』『FAKE』となりますが、最初の2作品以外は気分次第で変わると思います。
『この世界の片隅に』は観てないなら早く観てください、で話は終わり。『ポッピンQ』はブログにも書いた通り、欠点はありますが刺さる人には刺さるし、キャラはかわいいのでオススメ。それに売れてくれないと続編が出ないので、俺は続編が観たいという意味でも推す。
テレビアニメにはとんと疎くなってしまいましたが、『灼熱の卓球娘』『響け!ユーフォニアム2』は面白かったです。もっともその2作品以外は観てないので、ランキングのつけようがない。
『灼熱の卓球娘』は絵で敬遠していたのですが、以下のツイートを見て配信で追いかけたら一気にはまってしまいました。思った以上にスポ根でした。
「灼熱の卓球娘」の熱さは「ちはやふる」や「咲」に通じるあの熱さなんでおじさんたちはみんな見るといいとおもいます
— Kousyou (@kousyou) 2016年12月6日
『響け!ユーフォニアム2』は1期がスポ根だとしたら2期は人間ドラマをメインにした感じ。演奏シーンは7話の部長のバリサクソロ@宝島 が白眉。あと黒沢ともよさんの演技がもう、10話とかたまらなかったです。
あと『Tokyo 7th Sisters』のライブビューイングに行って声優のライブは楽しいなぁと思いました。光る棒も買いましたので、チケットが取れるかはともかく、4月のライブには気合い入れて臨みたいです。その前にログボだけもらうのではなくゲームをやれという話ではあります。
旅行は2年連続で呉と広島に行きました。来年も行くかは不明ですが、呉の山の方に行ってないので足を運びたいところです。しかし映画がこんなにヒットした中で青山クラブを取り壊すのは正直愚策だと思うのだがなぁ。
つらつらと思い返してみましたが、日記とかブログの過去記事を見ないと自分が何をしていたか思い出せないという事実が明らかになってつらいです。何の助けも無しに思い出せるのは2か月くらい前の出来事までですね。それもどうなんだ。
そんな感じで四捨五入すると40歳になってしまう年に突入するわけですが、来年もよろしくお願いします。
2016年のまとめ(書肆ヘルニア編)
2016年も終わるので書肆ヘルニアとしての活動をまとめておきます。
今年は一箱古本市に4回出店しました。
売上は『この世界の片隅に』をメインにした不忍一箱古本市以外は芳しくありませんでした。商品が偏っていたという反省はありますので、来年に生かしたいところです。
来年も同じくらいの出店をしたいなぁと思います。
あとはドジブックスさんが主催しているひとつき十冊への出演が3回ありました。
もともと私の知り合いである雲雀洞さんが出演していたので、「私も出たい」と言い続けたら出られることになったのです。1回出ればいいかと思っていたら、その後いろいろあって3回連続で出演することになってました。今後の出演についてはドジブックスさん次第です。とりあえず来月の総集編には出ます。
【次回!】来年1月22日(日) 第25回「ひとつき十冊」は年間総集編です。2016年一年間に読んだ本から各十冊。ゲストは、古書現世・向井透史さん。そしてさきほど決まりました。追加メンバーに、書肆ヘルニアさんも参加です。お楽しみに! pic.twitter.com/0NFbDG2qja
— ドジブックス (@dojibooks) 2016年12月10日
こういうイベントなどで普段は会うこともない方たちと知り合えるのはいい機会なので、時間に余裕があれば来年は色んなイベントに出没したいです。
来年もよろしくお願いします。