西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」のはなし』

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)

 この本は「よりみちパン!セ」という叢書の1冊として書かれていて、その対象は主に小学生から中学生です。が、大人も子供もみんな読め。この本は生き方論としても、仕事論としても、就職論としても読める。なにせ扱っているテーマが「カネ」だから、どうしても「働くこと」や「生きること」に繋がってしまうのです。ちなみに「カネが何だというのだ。金がなくても心が豊かならそれで良いではないか」という考えは「傲慢な考え」と批判されています。

 で、内容については抜粋しているこのサイトを見れば全てが済んでしまうのですが、「「どうしたら夢がかなうか」ではなく「どうしたらそれで稼げるか?」を考えてみよう」、とか「才能は人から教えられるもので、いい仕事をすればそれがまた次の仕事につながってその繰り返し。ときには自分でも意識的に方向転換をしながら、とにかく自分の足を止めないでいれば、自分の道がハッキリ見えてきた」という文章に「おお」と思ったのですが、すごいと思ったのは「(お金が稼げるようになって出来ることや行動範囲が広がっていくから)「大人になる」って、楽しいことなんだよ」と言い切れるところ。確かに社会人になって一人暮らしは出来たし、行動範囲も広がるはず(広がったと言えないのは学生時代に比べて明らかに旅に出ることがなくなったからです。そもそもそんな時間が無い)なのだが、大人になるのが楽しいと言い切れないなぁ。

 それにしても第5章の「いざというとき、大切な誰かを安心な場所にいさせてあげたい。/そう思うなら、働きなさい。働いて、お金を稼ぎなさい。そうして強くなりなさい。/それが、大人になるっていうことなんだと思う」という文章に、終わりにで書かれている「どんなときでも、働くこと、働きつづけることが『希望』になる、っていうことを。/ときには、休んでもいい。/でも、自分から外に出て、手足を動かして、心で感じることだけは、諦めないで」という文章で泣きそうになった。まったく、何を書いても自分の弱いところをつく。

 それにしても自分が就職活動していたときにこの本があれば、働くということについてきちんと考えられたのに、と思ってしまう。働いている人も、働こうとする人も、読むべき本だと思いました。