『さくら荘のペットな彼女』を見たら『ピンポン』を再読したくなった

 今期のアニメでは『さくら荘のペットな彼女』と『ガールズ&パンツァー』が2強だと思っているのですが、後者はともかく前者が話題にならないのが淋しいですね。

 さて、『さくら荘』10話を見たら松本大洋『ピンポン』を猛烈に再読したくなりましたよ、と。

 『ピンポン』は月本誠(スマイル)と星野裕(ペコ)の2人が主人公の卓球にかける高校生の物語です(カッコ内にあるのはあだ名)。といっても、序盤の2人は才能があるにもかかわらず、それを生かそうとしません。ところが、スマイルの才能に目をつけた顧問が特訓することで、彼は目覚めます。一方のペコはというと、インターハイ予選で幼なじみに完敗した事で一時的に卓球を捨てます。ところが、その幼なじみの説得を受けたことで一念発起し、卓球の世界に戻ります。というのがあらすじ。

 で、スマイルと対戦した名門校の副主将が1ゲームも取れないまま敗れたあと、主将にこう言います。

 まるで、悪夢見とるようじゃった。/大学上がりおっても、打ち続けよう思うちょったが、その気も失せたわ、ハハ…/ありゃ、人間じゃなか。/儂には倒せん。

 『さくら荘』10話でもリタがなじりますよね。ましろの絵を見て祖父のアトリエから一人、また一人といなくなった。みんな絵を嫌いになっていったと。

 そう、他人の才能は同じ舞台にいる人を失意のうちに去らせてしまうものです。ところが才能には別の一面もあります。

 『ピンポン』で重要な人物といえばドラゴンこと風間竜一が挙げられるでしょう。卓球名門校の主将にして、インターハイ2年連続個人優勝という成績を持つ人物です。ただ、彼にとって卓球とは苦しいものとして描かれています。その彼がペコとの対戦で、

 此処はいい……/此処は素晴しい

と思うのです。才能のある人間にしか行くことのできない境地があって、そこまで連れて行くことのできるのは、トートロジーですが、才能のある人間だけなんですよね。自分を引き上げてくれるのも他人の才能なんだと思います。

 で、『さくら荘』では空太がそのことを分かっている人間なんですよね。だからこそ龍之介はリタに空太がリタとは違う人間であることを伝えたのだろうと思うのです。

 いろいろ書きましたが、『さくら荘のペットな彼女』は青春ものとしてオススメなので今からでも見るといいです。

ピンポン (1) (Big spirits comics special)

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