『ちはやふる』<上の句>がすごく良かった話

ちはやふる』<上の句>を観ました。

chihayafuru-movie.com


「ちはやふる -上の句・下の句-」予告

 

傑作でした。

togetter.com

言いたいことは上のまとめでほとんどなので、自分が書くことはない気もします。本当に素晴らしかったので、みんな観るべし。とはいえ、自分も書きたくて仕方がないので、もう言われていることがほとんどかもしれませんが書きます。

 
さて、『ちはやふる』はアニメから入って、原作も買っていましたが(最近積ん読になってしまってますが)、映画を観る気はあまりありませんでした。
 
というのも、
「人気コミック原作」
「主演は美女とイケメン」
「前後二部作」
「製作はテレビ局」
と来れば見えている地雷じゃないですか。まあ、まともに実写映画を観ないのに地雷もへったくれもないのですが、恋愛ものにしちゃうんでしょどうせ、と思ったのは事実です。
 
しかし、

 

realsound.jp


 とあったら観ざるをえない。で、観たら、予想以上に素晴らしく、もう土下座ですよ。

 
というわけで、どこが良かったのか書いていきます。思いっきりネタバレしますが、ネタバレしたら面白さが半減するような作品でもないので配慮はしません。

 1.演者が素晴らしい

まず、千早役って難しいと思うんですよ。美人なのに頭の中は競技かるたの事しかないかるた馬鹿。そもそも人気の若手女優に出来るのか、とすごく失礼な目で見てましたが、広瀬すずは綾瀬千早でした。もう、違和感がないどころかリアル千早でした。
 
あと野村周平演じる太一もイケメンで金持ちで頭もいいのに、いちばん欲しいものがないという難しい役でしたが、これも素晴らしかったです。特に大会前日の演技が良かったです。
 

2.演出がよく、原作を殺してない

まあなんといっても屋上のシーン。以下のツイートの通りなんだけど、
あのシーン、千早は屋上の柵に足をかけて下に向かって声を出しているんです。で、風吹いてるんですよ。千早、スカートはいてるんです。普通かどうかは中年男性なので分かりませんが、太一の事を意識してたらスカートを手で押さえると思うんです。パンツが見えないように。ところが千早は手で押さえないの。もう、あれ、健全な高校生には目に毒だと思うんですけど。つまり「千早と太一には深い繋がりがある。が、それは恋愛感情ではない」というのをそこで表現してるんです。あそこはすごく上手いと思いました。しかも原作にはない映画オリジナルの場面なんですよ。
 
あと団体戦決勝の机くんの回想。あそこでこのカットを出すのか、と。あれは本当に不意打ちだった。泣く。
 
ただ「あ、これは信用できる」と思ったのは冒頭です。千早が入部希望の男子高校生に見本を見せるところ。あそこは映画オリジナルのシーンなんですが、千早と競技かるたがイメージと全く違うということを上手く表現してました。
 
まあ、共学の高校に姉がモデルの妹がいる(しかもかわいい)。かるたのイメージなんて大半の人は正月に家族でやるか、学校でやるものだろうから、たぶんあそこにいた男子の9割は同じ札を取ろうとして手を触っちゃった的なシチュエーションを妄想してたと思うんですよ。
 
ところが相手はかるた馬鹿の千早である。モデルの妹というイメージを吹っ飛ばす豪快な取り、札も吹っ飛ぶ、どころか刺さる。(鼻を伸ばした男子を見て)「まあそうなるな」、(逃げる男子を見て)「まあそうなるな」と思いましたよ、私は。
 
あと、恋愛ものになったら嫌だなと思った最大の理由は、『ちはやふる』って千早と新と太一だけ描いても駄目な作品だからです。
 
というのも、千早のライバルである詩暢との闘いは「強くあるためには孤独でなくてはいけない」と考える詩暢と、「仲間がいるから強くなれる」と考える千早の思想戦でもあるからです。それを描くためには瑞沢高校かるた部の面々や、競技かるたを取り巻く人たちを描かないと説得力がないんです。
 
で、映画では後者の描写は弱く感じましたが、これは尺を考えると仕方ないのかもしれません。ただ前者は描けていたと思います。
 
というわけで、長々と書いてしまいましたが本当に良かったです。『響け!ユーフォニアム』が好きな人なら絶対はまる、はず。
 
それにしても上の句だけでこんなになってしまったのに、下の句はこれを上回る出来だとか。

 

ハードルものすごく上がってますが大丈夫?
 

余談

さて、これを観て反省しました。最初に書いた「テレビ局製作」「人気コミック原作」で観もしないで判断してしまうことが如何に暴力的か。もちろんテレビ局製作で人気コミック原作の下らない映画があるのは事実なのでしょう。しかし、そうではない作品もあるのだなぁと思いました。食わず嫌いはだめですね。
 
というか、普段「萌え4コマ原作のアニメなんてどうせオタクに媚びただけの作品なんだろ、と思うの良くない」と言っているくせに、ジャンルが違えば同じような言動をしていたのだから世話がない。反省。