snoozer最新号を読みながら「そういえば本場ってどこ行ったのかなぁ」と思うなど
snoozer (スヌーザー) 2010年 12月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: リトル・モア
- 発売日: 2010/10/18
- メディア: 雑誌
- 購入: 1人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
1年ぶりにsnoozerを買う。理由は「洋楽文化絶滅カウントダウン」という特集が気になったからです。それを読んで思いついたことをグダグダと。
2年前に和田アキ子がアポロ・シアターでライブをした時に「ここでライブができて嬉しい」というような事を言っていたのを思い出したのです。そこから、むかーしむかしといってもそんなに昔でもないのですが、私が高校生の頃はTHE YELLOW MONKEYがイギリスでCDを出して「売れてない」と週刊文春(新潮だったかも)に書かれたり、the pillowsもイギリスでライブをしてたんじゃなかろうか(これは『Little Busters』の歌詞カードの写真から)。
なんでそんな事をしてたのか、と今になって思うと「ロックやソウルの本場で成功したい」という気持ちがあったからだと思う。ではなんでそんな気持ちを持っていたかというと、自分たちの音楽は借り物だという意識があったんじゃないかと思う。だから本場で認められたいという願望があったのではないかなぁ、と。それに加えて「日本のものよりも西洋のものの方がいい」という価値観が音楽にしろ文学にしろ思想にしろあったのだと思う。
そういうのがなくなってきたのが90年代の終わりなんじゃなかろうか、と言ってもその頃の私は高校生で海外とかに興味がなかったから、少ない文献で推測するしかないのだけど。例えば東浩紀氏の
90年代の半ばに決定的な変化があった。それは何かというと、そのころから日本では決定的に輸入文化が成立しなくなるんです。海外のものを輸入する、紹介するという行為が、文化的先端のモードとして信用されなくなる。それは文学でも音楽でもサブカルチャーでも言えることですが、思想業界も無縁ではなかった。つまりは、そのころから、海外の思想家を一所懸命に翻訳し紹介することが急速に無意味になっていった。
という『思想地図 Vol.4』での発言だったり、福田和也氏の『作家の値打ち』(2000年)ではとある純文学作家の項で
西洋文化全般への劣等感や憧れどころか関心すら消失したかに見える現在、その点では、今日むしろ加賀の存在は貴重であるかもしれない
と書いているので、まぁ大体その辺で海外への過剰な意識がなくなってきたのだと思う。それは「本場」の消失ともつながっているんじゃないかなぁ、と思うのです。
ところで、上の例とは少し違うのですが、snoozer#30(2002年4月号)を読むとその事を肯定的に捉えてる節があるのです。「『98年世代』、以前・以後」という特集の編集部の鼎談での田中宗一郎氏の
つまりさ、それ以前にあった日本のロックって、『ロック』という形式の輸入だったんじゃないかな?それ如実に証明してると思うのが――ほら、この特集で、各3バンド*1のインタビューの後に、『それぞれのアルバムのパースペクティブから楽しむアルバム10選』って企画をやってるじゃん?あの企画って、彼ら以前のバンドに対しては、絶対にできなかったと思うんだよ。というか、やったらいけないことだった。(「と言うと?」という疑問の後に)まず、同時代体験として英米のロックを聴くこと自体が、あまりなかった。あったとしても、それは形式上の影響関係に留まっていた。つまり言っちゃえばパクリって形になっていたから、やっぱりこういう企画は成立しなかったと思うんだよ。
という発言を読むと、「海外でないといけない」という風潮がなくなってきて、海外のものを踏まえて独自の表現をするようになってきたのでしょう。そしてその事をリスナーも受け入れた、と。
問題はミュージシャンはともかく、聞くほうが「じゃあ海外のを聞かなくてもいいんじゃないの」という考えになってしまったことなのだと思います。「なんで洋楽聴くの?」という質問が当たり前になってしまう事態。でもやってる方は洋楽を聴いていると思うのですが、そこまで関心がいかないというか、『けいおん!!』効果でThe Whoが話題になるかと思いましたが、見事になりませんでしたね。そうか、律ちゃんの使っていた文具には興味はあるが、律ちゃんの好きなドラマーには興味ないのか。
で、律ちゃんはともかく、洋楽が聴かれなくなった原因を「音楽という文化の力が落ちてきている」というのはともかく、「不景気でドメスティック化が進んだから」という理由は分かるけど、いまいち腑に落ちないんだよなぁ。確かに不景気が長く続いているけど、不景気だから洋楽が聴かれなくなったというより、海外に対するコンプレックスがなくなったのがでかいんじゃないのか、という気がするのです。「ニッポンの「カワイイ!」が世界を席捲」というニュースを見ればコンプレックスなんか持ちようもないよなぁ、と思いつつ、自分と違う文化を知ろうとしないというのもまた問題だとは思うけど。
とりあえず私は洋楽を聴きなおすところから始めたいと思います。