読書メーター(2018年まとめ)

2018年の読書メーター
読んだ本の数:54
読んだページ数:16502
ナイス数:98

リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門感想
時事問題と絡めた第1部はともかく、思想がメインとなる第2部はかなり難しく(というより自分の興味がそこにないため)、きちんと読み込めていないような。しかし、これを読むべきは世間やマスコミで所謂「リベラル」と呼ばれている人なんでしょうけど、そこに届いていない感じが歯がゆいというなんというか。
読了日:12月30日 著者:井上 達夫
選曲の社会史  「洋楽かぶれ」の系譜選曲の社会史 「洋楽かぶれ」の系譜感想
DJ、店舗BGMの選曲者に焦点を当てた第1部は面白かったのですが、それ以降は日本人ミュージシャンがどのように洋楽を摂取したかがメインとなってしまっているように思えました。例えば細野晴臣の音楽の受容を枕に店舗BGMの選曲をメインにした方がいいと思うのですがそれが逆になっていたりして、選曲というよりも「洋楽かぶれ」の方が前面に出てきているように感じられました。あと著者が横浜生まれのためか、本の半分が横浜本牧の話になっていて、それもタイトルと内容がかみ合ってない印象を受ける原因なのかも。
読了日:12月26日 著者:君塚洋一
完本 美空ひばり (ちくま文庫)完本 美空ひばり (ちくま文庫)感想
美空ひばりの生い立ちから国民歌手(と言っていいのかしらん)になるまでを追ったルポルタージュですが、戦後史とひばりの足跡を重ねているだけでなく、大衆のひばり受容に対する「進歩派知識人」への批判は現代にも通じるところがあると感じました。あと、読んでいると美空ひばりの曲が聞きたくなります。
読了日:12月15日 著者:竹中 労
日本代表とMr.Children日本代表とMr.Children感想
サッカー日本代表にもMr.Childrenにも思い入れのない人間ですが、面白く読めました。日本代表とMr.Childrenを補助線にして平成という時代を見ていくと「どんどんと内向きになっていった時代」という風に思えてきます。あと『終わりなき旅』がアスリートにものすごく人気があることを知りました。
読了日:12月04日 著者:宇野維正,レジー
素晴らしい日本野球 (新潮文庫)素晴らしい日本野球 (新潮文庫)感想
書かれた当時はともかく、表題作は野球が地上波でほとんど放送されない今ではオチがちょっと苦しいなぁと思ってしまう。昔の自分なら面白く読めていたのだろうか、とも思ってしまい複雑な気分になりました。
読了日:11月30日 著者:小林 信彦
ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] 共感力 (ハーバード・ビジネス・レビュー EIシリーズ)ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] 共感力 (ハーバード・ビジネス・レビュー EIシリーズ)感想
共感力が組織をマネジメントする上でいかに大事か書いているのですが、個人的には5章の「子育て経験のある上司の方がそうでない上司よりも、子育てに関する要望に対して厳しい」とか6章、7章の「権力を持つとなぜ横柄になるのか」という話が興味深かった。自己啓発というより行動科学や認知科学の本として読んでいるのかもしれないです。
読了日:11月27日 著者: 
ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] 幸福学 (ハーバード・ビジネス・レビュー EIシリーズ)ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] 幸福学 (ハーバード・ビジネス・レビュー EIシリーズ)感想
社員の幸福が会社の利益につながるということで、「①判断の裁量を与える、②情報を共有する、③ぞんざいな扱いを極力なくす、④成果についてフィードバックを行う」ことが具体例として挙げられている。もっとも幸福を追求することが本当にいいのかは議論を呼んでいるらしいのですが、上の4つについては社員の幸福云々ではなく、部下に気持ちよく働いてもらうために心がけるべきことという気もしました。
読了日:11月25日 著者: 
文士の友情: 吉行淳之介の事など (新潮文庫)文士の友情: 吉行淳之介の事など (新潮文庫)感想
著者の本を読むのは初めてで、第三の新人と言われる作家達の小説で読んだことがあるのが遠藤周作『沈黙』のみという人間なので、これらの作家の小説を読んでいればもっと面白かったのかもしれません。あと、吉行淳之介全集の月報で藤子・F・不二雄『やすらぎの館』の元ネタらしきものを知るとは思いませんでした。
読了日:11月06日 著者:安岡 章太郎
ヤバい経済学 [増補改訂版]ヤバい経済学 [増補改訂版]感想
データやインセンティブといった経済学で使用するツールや考え方が世の中を分析したり、自分たちの通念を覆す考えができることが分かり大変面白かった。それにしても訳文が山形浩生っぽい。
読了日:10月22日 著者:スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー
増補 にほんのうた (平凡社ライブラリー)増補 にほんのうた (平凡社ライブラリー)感想
2003年刊。終戦直後から90年代後半までのJポップを含めた日本の歌謡曲史を追った一冊。通して読むと日本の歌謡曲が海外の音楽に影響を受け吸収してきた事が分かります。
読了日:10月16日 著者:北中 正和
そしてみんな軽くなった―トム・ウルフの1970年代革命講座そしてみんな軽くなった―トム・ウルフの1970年代革命講座感想
原書は1980年刊行。1960年代、1970年代の風俗をやや皮肉気味にスケッチしているのですが、その年代のことが分からないので皮肉っぽいとは思うけど面白いかと言われると、みたいな感じになってしまうのが何とも。
読了日:10月13日 著者:トム・ウルフ
ラバーソウルの弾みかた  ビートルズと60年代文化のゆくえ (平凡社ライブラリー)ラバーソウルの弾みかた ビートルズと60年代文化のゆくえ (平凡社ライブラリー)感想
2004年刊(親本は1989年刊)。タイトルからカウンターカルチャーを肯定した本かと思っていたのだが、その終焉や資本主義へ変化していく様も書いてあって、けっこう距離を取っている印象を受けた。まぁ文化研究というのはそういう風にするものなのだろうけど。ただ文章や方法論は「何を言ってるんだ。意味わかってるのか。格好つけてるだけでは」と思ってしまうところもある。
読了日:10月10日 著者:佐藤 良明
経団連: 落日の財界総本山 (新潮新書)経団連: 落日の財界総本山 (新潮新書)感想
2014年刊。読んでいると自由経済を推進し官僚とやりあった第2代会長・石坂泰三や政治献金問題に取り組んだ第4代会長・土光敏夫みたいな気概を持った経営者、「財界人に何の権限があって総理に辞めろと言うのか」と言える政治家がいないことが今の日本の問題なんじゃないかと思えてきます。もっとも戦前・戦後すぐに活躍した政治家や財界人は修羅場をくぐってきた人だろうし、エリートコースに乗ってきた経営者や2世、3世議員にそれを期待するのがマチガイかもしれませんが。
読了日:10月04日 著者:安西 巧
【増補改訂】 財務3表一体理解法 (朝日新書)【増補改訂】 財務3表一体理解法 (朝日新書)感想
2016年刊。初心者でも分かった気になれますが、自分で手を動かさないときちんと理解できないとも思えました。ただ最後の方は流し読みでしたので、必要になったら再読しようかと思います。
読了日:09月29日 著者:國貞克則
転職のまえに: ノンエリートのキャリアの活かし方 (ちくま新書)転職のまえに: ノンエリートのキャリアの活かし方 (ちくま新書)感想
2018年刊。世界でも長期雇用の方が多く、転職は個人的な動機が主であって「自分の所属している業界が衰退しているから、成長している業界に転職する」ことはほとんどないということ。つまるところ大事なのは自己投資や人間関係であること。マクロ的な視線の軽視がやや気になりますが(あと、昔の日本や東南アジアに比べると豊かであると言われても貧しいもんは貧しいんじゃと言いたくなる)、人工知能で職がなくなるとか老後の不安をいう本よりも地に足がついていると思えました。
読了日:09月20日 著者:中沢 孝夫
日本海軍に捧ぐ (PHP文庫)日本海軍に捧ぐ (PHP文庫)感想
2001年刊。著者の海軍に関する短篇や随筆をまとめたもの。個人的には広瀬武夫滝廉太郎を描いた「荒城の月」が印象深かったです。
読了日:09月06日 著者:阿川 弘之
海軍こぼれ話 (光文社文庫)海軍こぼれ話 (光文社文庫)感想
1990年刊行(親本は1985年刊)。『山本五十六』、『軍艦長門の生涯』を著した著者の海軍よもやま話。海軍を持ち上げるでも卑下するのでもなく、褒めるところは褒め、ダメなところは批判するバランス感覚が良かったです。ただ一番面白いというか苦笑してしまったのは「補給がうまくいってない事を歌うと、なぜ日本人の士気は昂揚するのか」という外国人のツッコミだったり。
読了日:08月29日 著者:阿川 弘之
林芙美子随筆集 (岩波文庫)林芙美子随筆集 (岩波文庫)感想
面白かった。実際は違うのかもしれませんが、林芙美子という人は理念や思想よりも実際の生活が先に来る人だったのではないかと思えてきます。
読了日:08月24日 著者:林 芙美子
海軍随筆 (中公文庫)海軍随筆 (中公文庫)感想
著者の『海軍』を読んでいないので、この小説はこのような取材から生まれたのかというような感はないのですが、兵学校の描写を読んでいると、兵学校から今の学校への道はつながっているんじゃないかと思えてきました。「いわれたことを、必ずやるーこれは軍人にとって、非常に大切なことなんです」(P.26)なんて言葉は特にそう思わせるものがあります。こういう読みが良い読みなのかは分かりませんが。
読了日:08月21日 著者:獅子 文六
オフサイドはなぜ反則か (平凡社ライブラリー)オフサイドはなぜ反則か (平凡社ライブラリー)感想
2001年刊行(親本は1985年刊行)。点を取らないといけないフットボールでなぜオフサイドというルールが生まれたのかを、社会構造や社会構造、それに伴うフットボール自体の変化から描いていく。読んでいるとフットボールというのは文化であり、文化史というのは自分たちが自明と思っているものがいつからそうなったのかを明らかにすることで、物事を客観視させるものなのだと思わせてくれる。文章はやや読みづらく感じました。
読了日:08月06日 著者:中村 敏雄
ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)感想
2006年刊行。社会科学における「ダメな議論」を様々なチェックポイントを使って見抜く方法を書いている。個人的には「自然」とか「等身大」といったなんとなくプラスっぽい言葉に惹かれたり、定義付けがキチンとされているかを考えないところがあるので気を付けようと思った。しかしP.186、P.192の著者が書いたバブル批判、成長批判の言説は今でも人文系が好みそうな言説だなぁ、と苦笑してしましました。
読了日:07月25日 著者:飯田 泰之
アナーキズム―名著でたどる日本思想入門 (ちくま新書)アナーキズム―名著でたどる日本思想入門 (ちくま新書)感想
2004年刊。著者の『ナショナリズム』と同じく10のテキストから日本のアナーキズムの歴史を書いている。第3章、第4章を読んで内田樹とその周辺が言っている「小商い」とか「ローカリズム」って農本アナーキズムとほぼ同じじゃないかと思いました。で、それは「個人の抑圧」や「共同体主義」しかもたらさないだろうなという自分の考えも強くなりましたが(だって提唱してる人たちって小集団の親玉ですがな)。ただ終章を読むと、14年前だから仕方ないのかもしれないが、経済に対する認識が不勉強に過ぎる気もします。
読了日:07月11日 著者:浅羽 通明
ナショナリズム―名著でたどる日本思想入門 (ちくま新書)ナショナリズム―名著でたどる日本思想入門 (ちくま新書)感想
2004年刊。ナショナリズムを称賛するでも批判するでもなく、それが日本でどのように生まれ展開したかを10のテキストを通して辿っていく。個人的にはナショナリズムが発生した明治期のテキスト(『日本風景論』、三宅雪嶺芳賀矢一『日本人論』)を解説した第4章、第5章が面白かった。
読了日:07月07日 著者:浅羽 通明
バンドやめようぜ! ──あるイギリス人のディープな現代日本ポップ・ロック界探検記 (ele-king books)バンドやめようぜ! ──あるイギリス人のディープな現代日本ポップ・ロック界探検記 (ele-king books)感想
2017年刊行。帯に「日本では否定的なレビューがタブーとなっているのはなぜか」とあるが、内容は日本の音楽を巡る環境が中心でタブーに切り込むという感じではありませんでした。様々なインディ、オルタナバンドの名前が挙がりますが、ほとんど分からない上に興味も湧かないというありさまで、内容云々というより、著者が好意的に扱っているバンドやシーンに対する関心がないことを実感させられた。
読了日:06月22日 著者:イアン・F・マーティン
アベノミクスが変えた日本経済 (ちくま新書)アベノミクスが変えた日本経済 (ちくま新書)感想
2018年刊行。正直なところ経済学の知識がある程度ないとサッパリ分からないところがあった。分かったのは「インフレ目標を達成することで、雇用状況が改善されているかをみるのが大事」ということと「経済が完全に成長軌道に乗るまでは消費増税のような緊縮策は取るべきではない」ということくらい。あとマクロ経済は国民生活に影響を及ぼすということも改めて感じた。
読了日:06月18日 著者:野口 旭
ソーシャル化する音楽 「聴取」から「遊び」へソーシャル化する音楽 「聴取」から「遊び」へ感想
2013年刊行。5年前の本なので今取り上げるとしたらiTunesStoreじゃなくてSpotifyだよなぁ、と思ったりもしますが、書かれている状況は古びていないように思えました。作品を鑑賞したり作品を通して作者の思想を理解することよりも、作品を通じてつながったり作品で遊んだりという事の方が優位に立っているという状況。ただ今の状況は急に出てきたのではなく、昔からそういうことは起きていたというのも興味深かった。あと個人的にはアイドルやアニソンにも触れているのがよかった。
読了日:06月10日 著者:円堂都司昭
声優 声の職人 (岩波新書)声優 声の職人 (岩波新書)感想
2018年刊。『アイズワイドシャット』のオーディションの話が興味深かった。あと「声優は日本語の文章と向き合う仕事だから、日本語力を身に付けないといけない」という考えは、実際に演技をしている人の意見だなぁと思いました。
読了日:05月30日 著者:森川 智之
文学と私・戦後と私 (新潮文庫)文学と私・戦後と私 (新潮文庫)感想
1974年刊行。海外のことをつづった第1部と自身について書いた第4部が良かった。特に「戦後と私」というエッセーの「しかしいったいこの世の中に私情以上に強烈な感情はあるか」という一文は印象に残った。ただ同じ文章を小林秀雄が書くと啖呵になるけど、江藤淳のそれは哀しさというか悲痛な叫びみたいに思えてきてしまう。これは著者の最期を知っているからかもしれないけど。ところで「『ヒッチコック・マガジン』の中原、大坪両氏が訪ねられ」とあったけど、小林信彦江藤淳の接点って山川方夫なんだろうか。
読了日:05月24日 著者:江藤 淳
進歩: 人類の未来が明るい10の理由進歩: 人類の未来が明るい10の理由感想
2018年刊行。悪いニュースが飛び交い人類の未来は暗いように思えるが、実は今の時代は貧困、環境、衛生が昔に比べて格段に改善している。それは経済成長や技術革新、啓蒙思想や未来への投資によってであり、我々はそれを取也してはいけないし、「昔は良かった」といった言説に飛びついてはいけないという内容。どうにも新技術が出てくると危険性を強く感じてしまうが、そのメリットもキチンと見ないといけないのだと思わされた。
読了日:05月20日 著者:ヨハン ノルベリ
そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学感想
2018年刊行。著者の本を何冊か読んでいるので、左派こそ経済政策を重視し、みんなが経済的に豊かになるような政策を打ち出すべきだという主張に目新しさはない。個人的にはブレイディみかこの「これから上るべき坂を目の前にしている若い人たちに対して、すでに坂の上のほうにいる人たちが、縮めとか、降りろとかいうのはとても残酷だと思います」(P.29)という言葉にとても共感する。
読了日:05月16日 著者:ブレイディ みかこ,松尾 匡,北田 暁大
反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか感想
2014年刊行。社会を改善するにはシステムを変えるといったことではなく、ルールを定めたり(そのためにはデモよりも議員への陳情の方が有効でしょう)、具体的な案を出していくといった地味な活動を通して行うべきものかと思いました。そうすると社会の変革を志望し、規制やルールを否定するカウンターカルチャーは問題を悪化させこそすれ解決には向かわせないと。しかしこういう本は文化人とかが読むべきなんだろうけど、読まないんだろうなぁ。
読了日:05月08日 著者:ジョセフ・ヒース,アンドルー・ポター
噂は噂 壇蜜日記4 (文春文庫)噂は噂 壇蜜日記4 (文春文庫)感想
2018年刊行。これで終わりかもしれないと思うと淋しい。「この仕事は嫌いではない。ただ向いていないとは思う」という文章もあれば、「朝から床の上で原稿を書く。見てるか。これが本当の枕営業だ」という文章があるところがたまらない。
読了日:04月30日 著者:壇 蜜
デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論感想
2018年刊行。人口減少によって日本は否応なく生産性を向上させなくてはならない、ではどうするか、ということで「高品質・相応価格」「女性の活用」「最低賃金の上昇(とそれに対応できない企業の淘汰)」を提案している。経済規模を維持しないと社会福祉が保てず「親を見殺しにする国になる」と言っているのはごもっとも。
読了日:04月21日 著者:デービッド アトキンソン
三文役者の待ち時間 (ちくま文庫)三文役者の待ち時間 (ちくま文庫)感想
2003年刊行。中断は挟むものの1977年~1983年までのジャズ、ミステリ、映画撮影の記録。もっともジャズ、ミステリ、映画に興味のない私には「もっともオレたちはマチガイダラケの国家に住んでいるんだから、こんなマチガイなんかどうでもいいか」(P.52)とか、「なんでもついでや、生きるもついで死ぬるもついで」(P.274)なんて言葉に惹かれるのです。それにしてもこういう言葉を書く俳優とか文化人っていなくなったような気がする。良識的な発言をするのが正しい文化人みたいな感じになっている気が。
読了日:04月16日 著者:殿山 泰司
考える耳 記憶の場、批評の眼考える耳 記憶の場、批評の眼感想
2007年刊行。音楽を補助線にして社会について語る音楽時評というコンセプトはいいと思うのですが、モーツァルトのイメージ(神話)批判のオチが紋切型の与党批判だったりするので、これなら社会時評部分は無かった方が良かったのではと思ってしまいました。
読了日:04月11日 著者:渡辺 裕
慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り―漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代 (新潮文庫)慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り―漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代 (新潮文庫)感想
2011年刊(親本は2001年)。同じ年に生まれた文学者七人の青春と時代を描いているが、日清戦争前で終わっているのでまだ漱石は作家になっていない。ただ著者の興味は日本という国がふにゃふにゃだった明治初期とその頃に生まれた文学者達の肖像にあったと思うので、尻切れトンボでも仕方がないのかなとは思う。彼ら七人に加えて、内田魯庵田山花袋泉鏡花も出てくるのでものすごく濃い。それにしても、彼らが同時代に生まれてなかったら、我々が知っている彼らになったのだろうか、と偶然というものについて考えてしまう。
読了日:04月09日 著者:坪内 祐三
すべてのJ-POPはパクリである (~現代ポップス論考)すべてのJ-POPはパクリである (~現代ポップス論考)感想
2014年刊。正直なところ冒頭の現代社会論みたいな文章は本人の実感以外のデータはないし、歌詞やコード分析もあまり目新しさは感じられませんでしたが、最後の「日本のポップスはすべてノベルティー・ソングである」という仮説は面白く、どちらかというとこちらをメインにしてほしかった感はあります。ただ「日本人は『人格』の部分に過去をさかのぼった歌い手の成長物語などの『文脈』を含めて作品を楽しんでいます」というのは自分でも実感はしますが、これって日本人だけのものなの?
読了日:03月31日 著者:マキタスポーツ
日本音楽の再発見 (1976年) (講談社現代新書)日本音楽の再発見 (1976年) (講談社現代新書)感想
1976年刊行。論点が多岐に渡り、自分でも未整理なので再読したい。しかし、「日本人が西洋音楽(ここではクラシック)を演奏する意義は何か」という問題は、西洋音楽を別のものにしても通じる気がする。
読了日:03月27日 著者:団 伊玖磨,小泉 文夫
怠惰の美徳 (中公文庫)怠惰の美徳 (中公文庫)感想
2018年刊。タイトルだけ見るとグータラな随筆ばかりが収められているように思えますが、実際にはそういう随筆は少なめ。個人的には「衰頽からの脱出」といった社会批判、日本批判が現代日本にも通じていて、そういう文章に魅力を感じました。ただこの作家が信用できるのは、上から目線ではなく、自分が批判しているものに魅力を感じていることに自覚的であることです。自分が俗物であるという意識を捨てなかったからこそ、そのような視線を持てたと思いますし、もし勤勉だったらそんな視線を持てたかどうか。
読了日:03月23日 著者:梅崎 春生
誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち (ハヤカワ文庫 NF)誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち (ハヤカワ文庫 NF)感想
2018年刊(親本は2016年刊)。音楽産業の変化をMP3開発者とCDプレス工場で働く労働者、大手レコード会社のCEOを軸に描き出しているが、様々な偶然が絡み合ってこのような変化が起きたのかと勉強になったし、それ以上に読み物としてものすごく面白かった。それにしてもCDから配信への変化に気づくと一気にビジネスモデルを変えてしまうところは、やっぱりアメリカはすごいというか抜け目ないというか。ネット社会を語る上でも欠かせない1冊だと思います。
読了日:03月18日 著者:スティーヴン ウィット
TYPE-MOONの軌跡 (星海社新書)TYPE-MOONの軌跡 (星海社新書)感想
2017年刊。那須きのこ・武内崇の出会いから『FGO』に至るTYPE-MOONの歴史をざっと見るにはいいのかもしれません。ただ彼らのファンではない私には「彼らの作品にファンが熱狂するのは、彼らの作品が魅力的だからだ」以上のことは書かれていない気がしました。例えば那須きのこが安易なクロスオーバーを嫌うという文章の後に、「TYPE-MOONのクロスオーバー作品は最大限にファンを楽しませるように世界観を交差させるからファンが熱狂する」と書かれてもサッパリ分からない。ファングッズの一種と考えるのが妥当。
読了日:03月15日 著者:坂上 秋成,武内 崇
ファンベース (ちくま新書)ファンベース (ちくま新書)感想
2018年刊。『ファンダム・レボリューション』の日本版、マーケティング版という感じで、事例が身近な分、興味深く読むことができた。新規顧客よりも今いるファンに向けてどう届けるかを書いていて参考になった。今後はどのようなジャンルや職種であれ、ファンを意識していかないといけないのではと思ったり。あと本書のメインテーマとはずれるのだが、ネットが大都市圏以外ではあまり活用されていないのが驚きだった。そういうところではテレビ広告などのマス媒体が効きやすいという指摘にも納得。
読了日:03月13日 著者:佐藤 尚之
賢い組織は「みんな」で決める:リーダーのための行動科学入門賢い組織は「みんな」で決める:リーダーのための行動科学入門感想
2016年刊行。タイトルだけ見ると「みんなの熟議で意思決定しましょう」という内容に思えるが、心理的バイアスや思い込み、評判プレッシャーなどの要素で熟議の結果、さらに極端に走ったり過度に楽観的になる可能性があるから、そうならないようにやり方を考えましょうという内容。実体験に基づくものより実験内容の照会が多いため、個人的には分かりにくく感じた。内容を理解したかはアヤシイ。先日読んだ『決定力!』とも通じる部分があり、併せて読み返したいところ。
読了日:03月11日 著者:キャス・サンスティーン,リード・ヘイスティ
決定力! ――正しく選択するための4つのステップ (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)決定力! ――正しく選択するための4つのステップ (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
2016年刊行(親本は2013年刊行)。意思決定を下すときに陥りがちな4つの罠、「視野の狭窄」「思いこみ」「一時的な感情」「自信過剰」を回避するために「選択肢を広げる」「仮説の現実性を考える」「決断の前に距離を置く」「誤りに備える」ことで、より賢明な意思決定をできるよう提案している。こういう本を高校時代に読みたかったなぁと思うのですが、それはともかく、このような行動科学や脳科学の本を読むと「人間は思った以上に頭が悪く、合理的でもなければ客観的でもない」と思うので、そういう認識の上で行動したいな、と思う。
読了日:03月06日 著者:チップ ハース,ダン ハース
現代「死語」ノート (岩波新書)現代「死語」ノート (岩波新書)感想
1997年刊行。「死語」といっても著者の感覚が基準になっているので、本当に死語なのか分からない言葉もある。「死語」をテーマに戦後史を語るという感じもするが、今の文化人のダメなところ(経済批判、反成長、土建屋批判)が出てきてゲンナリさせられた。こういう言説を読んだ人が似たような主張をするのだろうな、と思いますが、「<豊か>になった日本の大衆は怒りを失った」と書かれてもなぁ。その怒りとやらで何か事を成すことはできたんですか、と思ってしまいました。
読了日:02月27日 著者:小林 信彦
道化師のためのレッスン道化師のためのレッスン感想
1984年刊行。80年代、70年代、60年代に書かれた文章が収められている。個人的には糸井重里との対談と60年代に書かれた「俗流<放送批評>を斬る」が面白かったのですが、これは今の自分が興味を持っているのは作品の中身や作者の思想ではなく、作品の受け手は如何に作品を語るべきかという事だからだと。それにしても「テレビの歴史ももう長いから、スレッカラシ風になってくるのが恰好いい、みたいな風潮があるんですよ」という30年前の言葉は今も変わってない気がします。
読了日:02月24日 著者:小林 信彦
性表現規制の文化史性表現規制の文化史感想
2017年刊行。性表現規制が上流階級や成年男子より道徳的、理性的に劣る労働者や女性を非難するためのものだったのが、時代が進み彼らの社会的地位が上昇すると庇護対象として「未成年/青少年/児童」が発見され、彼らを守るために性表現規制が必要とされた事が分かり勉強になった。人びとはいつも「自分は悪徳に触れても平気だが、他の人はそうではないため悪影響を受けるから規制して保護しないといけない」と考えがちなのでしょうという言葉が印象的でした。
読了日:02月20日 著者:白田 秀彰
脳には妙なクセがある (新潮文庫)脳には妙なクセがある (新潮文庫)感想
2018年刊行(親本は2012年刊行)。脳科学の様々な(当時)最新の知見を紹介したエッセイで、同著者の『進化しすぎた脳』と重なる部分もあるが、「楽しいから笑うのではなく、笑顔だから楽しいという逆因果」や身体感覚と脳の関係、脳は入力よりも出力を重視するというところは刺激的でした。
読了日:02月16日 著者:池谷 裕二
脱貧困の経済学 (ちくま文庫)脱貧困の経済学 (ちくま文庫)感想
2012年刊(親本は2009年刊)。アベノミクス前に行われた経済学者と作家の対談で、今2人が対談したら話がかみ合わないような気がしないでもない。ただ刊行されたときは金融緩和も財政政策もしてなかったので、当時の状況を知ることができました。もっとも指摘されている再分配政策や職業支援、生活保護バッシングは変わってないように思えますし、「携帯電話やパソコンを持ってるから貧乏じゃない」という話は今もあることを考えると、この本で書かれていることは終わったことではないとも思うのです。
読了日:02月07日 著者:飯田 泰之,雨宮 処凛
ファンダム・レボリューション:SNS時代の新たな熱狂ファンダム・レボリューション:SNS時代の新たな熱狂感想
2017年刊。事例が海外のものというのもあるが、私がそこまで熱心にファン活動をせず、ファンサークルにも参加してないのでイマイチピンと来なかったところはあります。同人活動やコスプレをしたり、オフ会をよく主催する人が読むとまた違うのかもしれません。ただ第6章のクラウドファンディングのところは『この世界の片隅に』のクラウドファンディングに参加したからか、よく分かると言いますか、豪華なお礼がないやり方は正しかったのだなぁ、と。
読了日:02月03日 著者:ゾーイ フラード=ブラナー,アーロン M・グレイザー
笑う男―道化の現代史 (1971年)笑う男―道化の現代史 (1971年)感想
1971年刊。ユーモアに関する著者のエッセイと創作が書かれている。読んでいて著者の興味関心と自分のそれが乖離している気がしてきた。
読了日:01月30日 著者:小林 信彦
スイッチ! ──「変われない」を変える方法 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)スイッチ! ──「変われない」を変える方法 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
2016年刊行(親本は2013年刊)。物事を変えたり、人に何かしてもらうとき、数字が書かれた資料などで説得させようとしてしまうが、そうではなく感情に訴えかけたり、具体的で簡単な指示を出すことが大事とのこと。実生活に役立てることがたくさん書いてあるので、書かれていることをもとに生活や仕事を改善していきたい。
読了日:01月26日 著者:チップ ハース,ダン ハース
セゾン文化は何を夢みたセゾン文化は何を夢みた感想
2010年刊行。1970年~80年代にかけてセゾン文化にかかわっていた人たちのインタビューであり回想記。当時を知っている人からすると面白いのかもしれないのですが、「私はこう思っていた。こう考えていた」という話がメインのため当時の社会、経済状況の考察が薄く、なんだかロッキング・オン・ジャパンの〇万字インタビューみたいな感触もしました。結局あのような専門外や外部の人が色々とできたのは、当時の好景気によるのではないかという疑念が残りました。
読了日:01月18日 著者:永江 朗
笑学百科 (新潮文庫)笑学百科 (新潮文庫)感想
1985年刊行(親本は1982年刊行)。お笑いに興味がないので、個々の評よりも「自ら<正義の味方>と信じている大新聞社の威光を背負った人の怖さ」(P.204)とか、「現代の通人の傾向としては、本質的にマイナーなものを持ち出して、メジャーなものを否定しようとするのが目立つ」(P.213)という文章に今と変わらないのだなぁと思ったりしました。
読了日:01月04日 著者:小林 信彦

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